8月の初旬、暑い日だった。
ニューヨーク近代美術館「MoMA」に初めて行った。
良いとはきいていたが、ここまで素晴らしいとは思わなかった。
建築と作品の質がとても高く、空間ごと楽しめた。
建物の設計は、谷口吉生という建築家で日本のモダニズム建築の巨匠だ。
21世紀に入り、多くの建築家によって、様々な新しい概念の建築が建てられたが、
谷口吉生は徹底してモダニズムの建築を追求している。
細部まで洗練されていて、とても上質な空間が広がっていた。
向き合った2つの箱とその間に庭があり、よく使われる空間表現だが、
体験しないとわからなかった心地よさがあった。
縦にコの字型の軒のような建築言語は、谷口吉生の得意とするものだが、
一方の箱のガラスの開口部から向こう側の美しい姿が眺められる。
そして同時に自分のいる空間も同じ姿なのだと想像でき、
包まれるような感覚になった。
そして、内部空間と庭の床が、ガラスをはさみながら
同じ高さでひと続きになっており、モダニズム、日本的空間を感じた。
通路や階段などには、一階から天井まで上下に空いた空間があったり、
どのようにこの建物は作られているんだろと思わせる仕掛けがいくつもあった。
そして、展示されているアート作品だが、
企画展は何人かのアーティストの個展があり斬新だったが、
英語を読めないとわからない部分が多く、コンセプトから理解をするのは
難しかった。残念だった。
企画展は下層階にあり、私は一階づつ上がって行ったのだが、
そろそろ閉館という時間帯に最上階の、近代の巨匠たちの作品があることに
気付かされた。
すげー!と思いカメラで、ピカソの「アヴィニョンの娘たち」、マーク・ロスコ
の初期から晩年の作品、ジャクソン・ポロックの大きな作品、
スピード派の彫刻など、教科書に載っている作品が目白押しで
撮影を必死で行おうとしたのだが、係員が早く帰れ!と圧力をかけてきて
観客たちも大きく動き出したので、帰らざるを得なく流れに従った。
その日はものすごく残念だったが、
美術館と作品の在り方を考え直す、とても良い機会となった。
何度も通おうと思ったMoMAだった。
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